「て、天は我々を見放した〜!!!」ということで、今回は1977年公開の「八甲田山」の話を少し。原作は新田次郎さんの「八甲田山死の彷徨」です。
日露戦争直前の明治34年に対露戦を想定して冬の八甲田山で雪中行軍訓練が行われ、237名中198名が死亡という未曾有の山岳遭難事故がおきます。
雪中訓練は弘前側からは第三十四連隊の徳島大尉(高倉健)率いる徳島隊27名が、青森側からは第五連隊の神田大尉(北大路欣也)率いる神田隊210名が、それぞれ出発し八甲田山ですれ違うというものでした。雪に慣れた者だけを選抜した少数精鋭で、遠く十和田湖を迂回し11日間240kmに及ぶ行程で訓練に挑む徳島隊。一方の神田大尉も少数精鋭での編成を主張するも認められず、50kmという行程ながら210名の中隊規模で山田少佐(三国連太郎)の大隊本部も随行という大所帯となってしまいます。
地元の道案内を雇い、耐寒訓練を行って自然と折り合いを付けながら八甲田山へ向かう徳島隊に対し、一気に八甲田山に突入していく神田隊、彼等を"白い地獄"が待ち受けます。
平均気温が零下15度という、実際に遭難事故が起きた冬の八甲田山での長期ロケ。本物の吹雪の中で撮影された映像は圧巻です。「デイ・アフター・トゥモロー」のCGなど足下にも及びません。
山田少佐演じる三国連太郎さんが憎まれ役を好演しております。神田大尉の計画は却下、雇った道案内は断り、随行するだけと言いながら指揮権は奪ってしまうと大活躍(?)です。また徳島隊の道案内の一人を演じる若き日の秋吉久美子さんが可憐です。
その他、加山雄三、緒方拳、丹波哲郎、小林桂樹、森田健作、藤岡琢也、島田正吾、栗原小巻、加賀まり子等々、非常に豪華な顔ぶれが揃っております。
映画は救出された山田少佐の拳銃自決で幕を閉じますが、生還した徳島隊の将兵達も日露戦争で全員が戦死という結末だったそうです。
芥川也寸志の音楽も印象的でしたね。オーケストラによる交響詩「八甲田山」は聴き応え十分です。